訪問マッサージで知り合い個人的な友となったKさんはNYに移り住み、今回NYで会うことが出来た。
我が家に泊りがけで来て中国風韓国料理を作ってくれた後、何時間も心を込めてマッサージをしてくれた心優しい彼女。 北朝鮮と中国境界の地、吉林省に住む朝鮮族の彼女から闇夜にまぎれて河を渡ってくる脱北者や未だ現存する戦前の関東軍本部の建物の話を聞くのは興味深かった。 前にも書いたが、七年間日本でマッサージ師として働いた彼女は日本語も理解する。 「中国の映画やテレビに出てくる日本人は皆鬼畜より怖ろしい人だですよ。でも全然違いました。”一人で寂しいだろう”って、果物や食べ物を買ってくるお客さんや”国に送りなさい。”とチップを沢山くれる人もいましたよ。情けがあります。中国に帰ったとき、村の皆に日本人のことを話してあげましたよ。」 「国から教えられたことを信じている人たちが、どうやって貴女の言うことを信じるの?」 「私は学校の先生だったですよ。その先生が経験した本当のことを話すだから、信じるは当たり前でしょう。」 確かに一理ある。昔の日本のように、彼女の国では学校の先生は絶対的な存在なのだ。 彼女が住む場所から甥の所に来るにはバスや地下鉄を何度か乗り換えて三時間近くかかると言うKさんに「その気持ちだけで有難い。たった一日のクリスマスの休みに、ゆっくりして。」と言うと「ボストンでお世話になっただから、どんなに遠くても顔を見てお礼を言うのが人間です。」と、やってきた。 真っ赤な目に「どうしたのか?」と聞くと「会えると思ったら嬉しくて寝られませんでした。」とケラケラ笑う。 夜の10時半に仕事が終わり、バスや地下鉄で三時間かけて親類宅に帰宅をして、また三時間近くかけて午前の10時半に甥の家に来てくれた彼女は「お姉さん、クリスマスプレゼントです。」と封筒を差し出した。 承諾を得て中を見ると現金で200ドルが入っている。 少しお金が稼げるようになったのでお返しがしたいと言う彼女は中国の年老いた母や家族に必死に送金している。 彼女に取って、この金額は2,000ドルに値するだろう。 話を聞くと週七日、朝10時~夜の10時半まで毎日マッサージ院で働き、そこに寝泊りして時折三時間かけて親類の家に戻るそう。 それもマッサージ代金の80ドルは全部韓国人経営者の懐で、彼女が手にするのは客からのチップのみ。 暇な日は一日二人の客と言うので「二人ともチップをくれないとしたら無収入?」と驚くと「忙しい日もありますよ。沢山のチップをくれる客もいるだし。いい日も悪い日もあるが、人生じゃないですか。」と、明るく笑う。 半年間、腰痛の治療を受けながらも、杖なしでは歩けなくなった甥に2時間ほどのマッサージをした彼女から「歩いてください。」と言われた甥は恐る恐る立ち上がりながら「アレッ?」と言う顔。 そして真っ直ぐの体で歩き始め「マジックだ!!」と驚嘆。孫二人も驚きの目で感動の声をあげた。 その後、彼女は私まで揉んでくれたが、市井のマッサージ師で終わらせるのはもったいない。 用事のため途中まで地下鉄で一緒に行く日本語の解る孫に、彼女のバックにお金を戻したことを知らせておいた。 17歳の孫は、椅子に座っているキムさんに「二人分のマッサージ代がバッグに入っているよ!」と、声をかけて甥と弟と三人で電車から飛び出たそうで、彼女の唖然とした様子を楽しそうに話してくれ「僕、あの小母ちゃん、大好き。いい人だね。」と言う。 なかなか気の利いたことを言ってくれたものだ。 まるで春がきたような小春日和 英語を習ったことがない彼女が必死に書いたのが伝わってくる封筒の筆記 捨てがたく書類の箱にしまっている。
by arata-tamiko
| 2012-01-09 00:42
| 諸々の出来事
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