京都の道路で知り合ったYさんから「どんなものを食べたいですか?」と聞かれ「お昼だから豪華でなくっていいの。でも他では食べられないようなもの。」と漠然と言うと
「では学食はどうでしょうか?」と言ってきた。
「学食って、いわゆる学校の学食?」
「はい、そうです。京都大学の学食は美味しいのです。和食、中華、洋食、中近東、デザートと選べます。」
「行く、行く、そこに行く!!」
「あの~、今は医大の食堂は工事で休みなので農大の方に行きましょう。食堂は三つありますが、農大が一番美味しいのです。」とバスに揺られながら彼女が言う。
「どうして農大なの?」
「自分達で育てた野菜を使っていますから。今から行けば学生達が食べ終わっているので大丈夫です。」
京大の職員かと訊いたほど細にいり詳しい。
学生の昼食時間は一般者は遠慮しないといけないそうだ。
町のレストランに劣ることなく沢山のサンプルがショーケースに飾られ
値段の安いこと!
遠慮がちに丼物しかお盆にのせていないYさんに、私は「これも食べなさい。あれも食べなさい。豚汁も美味しそうよ。」と、勝手にどんどんお盆にのせていった。
食事をしながらYさんが「明日はどうされるのですか?」と聞いてくるので、ハイヤーを雇うことを話すと「もったいないです。私、明日は一日中時間がありますからバスにしませんか。」と、このまま別れ難い様子。
Iさんと思案して「ではお願いします。」となり、Iさんに「携帯番号を上げといたら?」と言うと「ホテルの部屋番号だけでいいのでは?」と躊躇している。
「でも外に出ていたら聞こえないこともあるかもよ。」と半ば強制的に番号を教えさせた。
食事に大満足をしたあと、彼女の案内でお寺巡りをしたが翌日も沢山回ったので寺名を覚えていない。
彼女と夕方別れたあと、四条河原町をブラブラして個人タクシーでホテルに向かいながら運転手と話しているうちに彼の同僚が観光専門の運転手をしているそうなのでお願いした。
ホテルの部屋でくつろぎながらIさんに
「Yさんね~、只者ではないわね。相当の学識と教養がある女性ね。」と言うと、Iさんも「実は私も同じことを思っていたの。何か事情があるのね。」と思うことは同じ。
「ねぇ、明日一日彼女を幸せにしてあげない?一緒に連れて行きましょうよ。」とIさんに意見を求めると、彼女も全く同じことを考えていたそう。
「それにしても酷いものね、私って。あんな良い人を
詐欺師だと疑ったりして。余りにも親切だったもの。」
「だから電話番号をあげなかったのね?」
「そうなのよ。あげろ、あげろって言われて困っちゃったわよ。」
(続く)
京大農学部の学生食堂に足を踏み入れ、このケースを
見ていると、京大生になったようで胸ががワクワクしてきた。
これ全部美味しく頂きました!