車を運転している時は、いつもニュースを聴いている。
歳と共に月日の経つ早さを身にしみて感じ入っているが、今日は特にそうだった。
1988年に始まった
「America`s Most Wanted」のテレビ番組が、間もなく打ち切られると言うニュースを聞きながら昔の出来事を思い出して一人笑う。
89年にボストンから1時間の郊外に家を購入。
大きな家に田舎の一人住まいも寂しいし、ローン支払いの足しにでもなればと新聞広告で「貸し部屋」の広告を出すと、40過ぎの男性から連絡があった。
話してみると、なかなかのインテリジェントでユーモアに溢れ、「知り合って間もない女性が時々来てもいいか?」と許しを得る常識ある言動も気に入って同じ屋根の下に住み始めた。
私は爆発的人気のこの新番組が大好きで毎週欠かさず必死で見ていた。
バーのカウンターに座る客達が番組を見ていると、離れたテーブルに座って飲んでいる男の写真が番組で紹介されていたなどと言ったエピソードや次から次へと面白いように摘発されるのが人気をより煽る。
司会者のJohn Walshが最後に
「憎むべき犯人は、あなたの近くにいるかもしれません。もし心当たりがあったら、、、。」と彼が言う電話番号を書き留めたりしていた。
しかしこの番組を見始めると彼が何か邪魔をしてくる。
ある時、ついに堪り兼ねて文句を言うと
「こんな番組を見ていると悪い夢をみてしまうよ。もっと精神を落ち着かせてくれるようなものを見たほうがいい。」と訳の分からないことを言う。
それから数ヶ月間いろいろなことがあり、あることで彼と彼女がFBIに追われていることが判り私はFBIに電話をして居場所を知らせた。
彼が何者かを調べていくうちに、二人は追っ手をごまかすために別々に住んでいることも犯罪歴もわかってきた。
怖くはなかったが、自分の無知さに腹がたった。
それ以来番組を見ることもなくなった。
私がテレビをつけ、見始める度に彼はヒヤヒヤものだっただろうと思うと笑いがでてしまう。
切れる男だったから彼の末路を思うと哀れになってくる。
あれから23年にもなったのだ。
雨が続く 寒い