日本語学校で催されたバザーにて1977年発行、遠藤周作の「狐狸庵閑話」を50セントで手に入れた。
彼の本気か嘘か判らないユーモアに抱腹絶倒させられ、僅か50セントでは相済まない気がする。 「深い河」や「沈黙」のような重厚な作品を執筆し、片やこの軽快なユーモアに溢れる随筆。 病弱だった遠藤氏は長い病院生活を強いられ、助からないだろうと言われた大手術を前にして家人に頼み込み九官鳥を飼った。 自分が死んだ時でも空は晴れ、日常の生活は同じように営まれることに対する復讐を計画したそうだ。 自分が死んだ後、九官鳥が自分とそっくりの声でしゃべり始めたら皆がギョッ!とするだろうと期待して。 この九官鳥、利口ではないらしく何としてでも覚えてくれない。 ところが隣室に三年も入院している爺さまが「生きているのも嫌になった。」と言うような一日に幾度ももらす吐息溜息をベランダで聞いている九官鳥は、爺さまの「ウァ~ン」を、そっくりそのまま真似するようになった。 ただでさえ滅入っている氏は、毎日こんな声を聞かされ何とも言えない複雑な気分になったと書いている。 (へなちょこ教育論のブログにも可笑しい逸話が書かれている。) 阿川弘之、北杜夫、三浦朱門、佐藤愛子とは特に仲が良く、阿川の娘の阿川佐和子が慶応を受験するとき、慶應仏文卒の遠藤周作が何かと助言をしてくれた。 裏口入学を斡旋してもらったわけではないのに、阿川佐和子が合格すると、すぐさま遠藤周作が「200万円相当のものをよこせ」といってきたので、父阿川は貰いもののワインや使いかけの昆布を送って、「ケネディ愛用の白ワイン」「紀州徳川公お気に入りの昆布」などと書いて「以上200万円也」と届けにいった。 北杜夫宅玄関の「狂犬注意」という看板を「狂人注意」に書き換えた。 遠藤は息子に「嘘はつくな」と教えていたが、自分は嘘ばかりついていた。 息子あてに女性から電話があると、氏は「あ、先日龍之介と箱根でご一緒した…その節はお世話になりました」などと言う。もちろん箱根に行った相手などいない。この相手とはご破算。 「龍之介さんいらっしゃいますか」と女の人が言うと、「ちょっとお待ち下さい」とか言いながら、受話器の口を押さえずに聞こえるように、「龍之介、龍之介。え?おらんっていうのか。悪いやないか。そうか」などと一人芝居して「もしもし龍之介は留守にしています」…こんな妨害にもめげず、龍之介さんは無事結婚した。 昔、友人の一人が書いていたが、氏も含め灘高の生徒達があこがれた佐藤愛子には終生相当のいたづらをしていたようだ。 声色を使い「電話会社ですが、音声の検査のため受話器に向かって大声で歌ってください。」と電話をし、乗せられた彼女は疑いもせず大声で童謡を歌ったとか。 しばしば阿川佐和子が父親のことを語っているが、遠藤氏に負けず劣らずの人物。 娘可愛さの余り、ボーイフレンドに対して尽くケチをつけた。佐和子氏が20代後半になって、父阿川はあせって「ズボンはいていればなんでもいいから結婚しなさい」 息子が生まれた時に女の子の名前しか用意していなかった阿川氏は通りかかった墓地で目に付いた墓石に刻まれた名前を拝借して息子につけ、娘にも同じ南家の墓石にあった佐和子を勝手にもらったそうだから、やはり普通人ではない。 秋晴れ 日本の姉から送られた夕顔の種を蒔き、初めての開花は夕方の5時ごろだった。 「どうして夕方と判るのかしら?」と、見事な大輪と香りに狂喜する思い。 ところが段々と開花の時間がずれてきて、遂には夜が明ける頃に蕾が開き始め 昼間に咲き誇るようになってきた、摩訶不思議さ。
by arata-tamiko
| 2014-09-25 10:58
| 諸々の出来事
|
カテゴリ
最新のトラックバック
以前の記事
2020年 10月 2020年 09月 2020年 08月 2020年 07月 2019年 05月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||