日本出発まで二週間余りとなったが未だ実感が湧かない。
二十年ぶりに会う大親友のTさんは、いろいろと趣向を凝らしたプランを立てている。
先日も「なぁ~、小学校に通う
”肥溜め通り”を覚えちょるやろ?」とSkypeがあった。
毎朝通学途中にあるTさんの家に寄ってから二人で学校に行った。
昔のように小学校まで一緒に歩いて行きたかったが、その狭い道も今ではセメントで固められ昔の面影は全く残っていないそう。
この道の両側には畠が広がり学校の帰途、成長した麦畑の中に潜り込んで病気になった黒い麦の穂を捜すのが楽しみだった。
その麦を何かに使うとかではなく、見つける楽しさだけなのだから今の子どもからすると単純な遊び。
畠の持ち主たちが人糞を溜め腐らせている深い穴が道路に沿ってあり、腐りかけた木の覆いが申し訳程度にのっていたから、その臭気たるや鼻が曲がるほど。
女の子の注目をあびたく、その覆いに上がった男の子が肥溜めに落ちたこともあり、相当長い間
”臭せえ、臭せえ”と馬鹿にされていた。
(昔は便器から下に落ちて、人糞にまみれ助け出される子もいた。)
その上、梅雨の季節には雨で水位?が上がり、人糞が道路に溢れ漂う中をゴム長靴をはいた私達はジャブジャブ歩いて通学していた。
おまけに用水路からあふれ出したお腹に赤と黒のまだら模様がある
”赤腹たいたい”と呼ばれる不気味なトカゲがプカプカ浮いていたりして、踏み潰されたものはもっと悲惨な姿。
そのせいか今でもトカゲ類は大嫌い。
姉と「それでも赤痢とかチフスになったとか言う子はいなかったわね。」と話したが、昔はこんな環境の中で抵抗力が自然に備わったのかも。
晴天
マルコメ味噌のような小学校三年の雄大君、食べることが大、大好き!
アパートの大きなクローゼット部屋は雄大君が両親の言うことを聞かない時に閉じ込める
ためのものと話すと
「僕閉じ込められるより御飯の量を減らされるほうが辛いです。」と
言う。
食べっぷり、体格、性格と私の下の孫を思い出させ、お世話が終わった昨日、別れる時
思わず抱きしめてしまった。
わき見もせず熱心に、そして世にも幸せそうに食べる雄大君
小学校一年の莉子ちゃんはほっそりしている。
礼儀正しく躾けの良い二人を見ていると、ほほえましく気持ちが良い。
私にだけでなく、なにかしてもらう度に二人は両親に対してでも無意識に「ありがとう。」と
お礼の言葉。
同じ建物に住む私のお客様だったKさんと、Yさんの奥さんは気が合うこと間違いなく、
確か莉子ちゃんと同じ歳だったので紹介したいと言って昼食にベトナムラーメン店に入ると
私の名を誰か呼んでいる。
見ると、そのKさんがお友達と食事をしている!
「この方なのよ。紹介したかったのは!」
「それも三日間、貴女のことを聞かされましたよ。」とYさんのご主人。
「そうよ。貴女のことを褒めちぎっているんだから本性を見せては駄目よ!」と忠告。
「はい。絶対に大丈夫です。気をつけますから。」とKさんの奥さん、チーちゃんは言う。