帰国前夜の食事  8/6/10

  韓国人のIさんから帰国前夜の食事招待をスヨンと受けた。
彼が行きつけのお店で、私達も店主と仲良い近くの韓国レストランに夜の8時に待ち合わせ。
三年前にスヨンが「お店に毎日来る男性が、友人もいなくて退屈しているようだから家に招待したい。」と言うことで知り合った。
その夜、スヨンが料理した品々は全て冷凍食品に火を入れたものだったが「絶対に秘密よ。」と言われていたので黙っていた。
それからと言うもの、Iさんは来るたびに抱え切れないほどのWhole Foodsで購入した高価な果物を持参するようになった。
スヨンと「毎度果物ではなくって、肉とか魚とかにもして欲しいって、それとなく言おうか?」と笑いあった。

 「お抱え運転手」と自己紹介してくれただけで、どこのどなたのために働いているのか絶対に話してくれない。
でも、彼の体格、軍隊式の90度のお辞儀の姿勢などから推測して「彼は単なる運転手ではないわ。誰かのボディーガードも兼ねているに違いない。」と、スヨンに言った。
一度など、昔釜山で我が家のお手伝いをしていた女性が80歳に近く、貧しい生活の中で病気になり、Iさんが一時帰国をする折にお金をことづけた。
「ソウルのI氏と名乗る人から”お金を送りました。”と電話がおましたんやけど、連絡先も電話番号も教えてくれしません。奥さん、こんな人と友達になっていやはるんですか?」と、心配して韓国から電話があった。
「そうよ。」と言うと「身元も分からへん人にお金を渡しはったんですか!」と、もっと心配をし始めた。

 2年ほどして彼の口から聞かされたのは、韓国では誰もが知る企業の御曹司の留学と、時折様子を見に来る両親の運転手兼ボディーガードで付き添っているそうだ。
政界でも活躍をしているようで、国連総長の潘 基文(パン・ギムン)のNYでの集会に、韓国に戻っていたIさんは、ボスの社長と一緒に数日のために飛んできていた。
 世間に知られた父親のサイトには「息子には苦労を身につけて欲しいため、車も与えていない。」と、苦学生ぶりが書かれていることを、スヨンが大笑いで話してくれた。
そりゃーそうだ。
学校の送り迎えも運転手つきだから自分で車を持つ必要もない。
毎日の食事も韓国からの賄いのオバサンがいるとは誰も知らない。

 韓国では同姓が多いから、日本人のように名前ですぐにばれることもないが、社長命令で彼が素性を開かせられなかった理由が判った。
友達を作ることも禁じられているそうで、お手伝いのオバサンとお店に買い物にきた時は友人の素振りは見せないようにとのお願いをされていた。

 息子も帰国をしたし、最後の夜だからとIさんは心ゆくまで焼酎を飲み、そこに店主の奥さんも加わって飲み始めお開きは11時。
こんなに酔った彼を見るのは初めて。よほど緊張感から開放されたのだろう。
「韓国にきたら絶対に電話をくださいよ。」と、彼は社名入りの名詞をくれた。

   涼しい
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                  この地では、この蝶の種類を見かけることは余りない

   
by arata-tamiko | 2010-08-08 03:15 | 諸々の出来事


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